2007.09.17 >>新八柱台病院小児科
RSウイルス感染症の話
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日本では、毎年11月頃から2月頃にかけて流行する感染症です。 咳・鼻程度の軽い風邪症状から気管支炎や肺炎などの重症な下気道感染まで様々な呼吸器症状を呈する可能性があり、全年齢を通じ感染発症する可能性があり、また何度も再感染し発症します。 この感染症は乳幼児期の繰り返す喘鳴(ゼーゼーした呼吸)や咳嗽症状といった一見「ぜんそく」のような症状の原因となり、その後の「ぜんそく」発症との関連性が示唆されています。 |
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潜伏期は4〜6日前後で、初期症状は咳・鼻水・発熱といった通常の風邪と同じ症状です。 年長児や成人では、咳・鼻水程度の感冒症状のみですむことが多いと思いますが、咳が遷延したり「ぜんそく」を持っている場合には発作の誘引になったり、時には気管支炎や肺炎を起こすこともあります。 熱は4〜5日程度続くことがありますが、注意が必要なのは呼吸器症状で、咳の増悪・喘鳴(ゼーゼーした呼吸音)・苦しそうな呼吸などは気管支炎や肺炎といった下気道感染への伸展を示唆する症状なので注意が必要です。 年少の乳幼児では、気管支炎や肺炎に伸展するリスクが高く、また1ヶ月未満の新生児では無呼吸を認めることがあり注意が必要となります。 乳幼児期にかかると、咳や喘鳴症状が遷延したり繰り返し認められたりして、しばらく気管支ぜんそく様の症状を認める事があり、その後の経過で気管支ぜんそくを発症してしまう場合も少なくありません。 |
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どのような時にRSウイルス感染症を疑うのか? 年長児や成人の風邪症状程度で実際の診療でRSウイルス感染症を通常の風邪と区別はできませんし、あえて検査をして確定する必要はありません。 流行時期に気管支炎や肺炎を起こした乳幼児や喘鳴(ゼーゼーした呼吸音)を認めるような時にはRSウイルス感染症を疑い診療をします。 確定診断には、インフルエンザなどと同じ様に鼻汁を綿棒で採取し15分程度で判定の出来る迅速検査があり診療上有用なのですが、現在は健康保険の適応が3歳未満で入院した場合に限られており外来診療では認められていません。 |
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インフルエンザに対するタミフルといったようなRSウイルスに対する特効薬はありません。 呼吸器症状の程度に応じ、対症的な治療を行い回復を待つことになります。 乳幼児では、呼吸器症状が増悪し入院治療を必要とすることが少なくありませんが、あくまで呼吸器症状に対する対症的な治療であって、感染症自体は自然の経過で沈静化してくるのを待つしかありません。 喘鳴や呼吸困難といった呼吸器症状に対しては、「ぜんそく」に準じた治療が行われることが多く、最近では「ぜんそく」の治療薬である抗ロイコトリエン拮抗薬(オノン、シングレア、キプレス)の効果が示唆されています。 |
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感染経路は、咳などからの飛沫感染と飛沫付着物を手等で触ってしまいそのまま食事をしたり口や鼻にもっていってしまい感染(接触感染)する経路が考えられます。 なので、こまめな手洗いやうがい、マスクの着用などが予防策としてある程度有効と考えられます。 家族内での感染のリスクは高く、通常ウイルスを最初に持ち込むのは、多くの人と接触の多い年長の子どもや大人で、その人自体は通常の風邪程度ですんでいても、家族内に乳幼児がいる場合には特に流行時期には注意する必要があります。また、保育所などでの流行にも注意する必要があります。 未熟児や心臓や肺に基礎疾患のある乳児で重症化のリスクの高いお子さんに対する予防として、RSV対するモノクローナ ル抗体製剤であるパリビズマブ(商品名:シナジス)の注射が保険適応されており、適応のある方はそのことで罹っている医療機関から説明されていることと思いますが、非常に高価な薬であり通常の診療で用いられることはありません。 |
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RSウイルス感染症は、気管支ぜんそくの増悪因子であり更にその発症の要因としても注目されています。 RSウイルス感染は、気道過敏性(咳や喘鳴のでやすい状態)を亢進させることが解っています。この状態は、再感染を繰り返したりしながら数年に渡って続く場合があり、症状として純粋な気管支ぜんそくと区別することが困難です。 ただし、気管支ぜんそくの家族歴やアトピー性皮膚炎やアレルギー体質などの素因を持っている場合には、RSウイルス感染を契機に気管支ぜんそくを発症してしまっている場合も少なくないと考えられます。 RSウイルス感染と気管支ぜんそくの発症の関連性は強く疑われており、直接的な関連性は科学的にはまだ解明されていませんが、経験的な診療の場では重要な要因を考えられています。 RSウイルス感染による気道過敏性に対して、気管支ぜんそくの治療薬である抗ロイコトリエン拮抗薬が有効であるとの報告がされており、症状のコントロールおよび気管支ぜんそく発症の阻止に対する効果が期待されています。 |